2020年の最も大きな出来事は、新型コロナウイルス感染症でしょう。
【注意】
日本において新型コロナウイルスの危険性を大きく認識させたのは、2020年1月に武漢市に渡航歴の無い(武漢市からの観光客と接触があった)男性、その男性及び武漢市からの観光客と接触があった女性、さらに男性とのみ接触があった女性が感染した事だと思います。
これは、日本において同一空間を共有した人間の間で新型コロナウイルスが感染した最初の事例となり、すでに対岸の火事では無いなと感じた記憶があります。
2020年1月27日に、新型コロナウイルスの発生源とされる中国からの団体客受け入れを停止したものの、北海道においては、2020年1月31日~2月11日まで例年大勢の観光客で賑わうさっぽろ雪まつりが開催されており、メインの大通会場(2月4日~11日まで)には約158万人が訪れました。
その後、北海道では緊急事態宣言を発令するに至り、一時落ち着いていたものの、最近は再び感染者数が大きく伸びている状況となっています。
新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた今年春(4-6月期)の売上動向を見ると、観光・レジャ-産業(対前年同期 日本-74%)、航空会社(同 日本-77%)、外食・総合小売(同 日本-29%)、物流(同 日本-27%)など特定の業種の減収幅がかなり大きくなっています。
この傾向は、すでに新型コロナウイルスからの脱却を始めていた(と主張する)中国以外の国々では、割合は多少異なれど同じ傾向が見られました。
現時点で、日本においても東京や北海道では一部業態に営業自粛要請が出させるなど、感染抑止策によって消費活動が停滞しています。特に直近の感染拡大によって、飲食業、小売業だけではなく幅広い業種で倒産が増加しています。
おそらく人類史上、これまで幾度となくパンデミックは繰り返されてきました。ただ、パンデミックの科学的証明は1900年頃からとされており、最も有名なのは1918年~19年にかけて発生し、世界人口の25~30%(WHO推計)の人が亡くなったとされるスペイン風邪でしょう。
スペイン風邪の病原体は、H1N1亜型のインフルエンザウイルスでしたが、当時は抗生物質が発見されておらず、インフルエンザウイルスの分離も1933年の出来事でしたので、まともな医学的アプローチはありませんでした。
ちなみに、日本においては38万人(内務省統計)が無くなり、人口のほぼ半数が感染したとされています。
新型コロナウイルスに感染すると、発熱・咳・喉の痛み・倦怠感といった風邪の諸症状があり、重症化すると肺炎などの呼吸器症状を引き起こす事は、繰り返し報道されていました。
さらに、現在では血管の内側を傷つける性質がある事がわかってきているようです。血管が傷つられると血栓ができますが、元々炎症がおきた細胞から出されるサイトカインというタンパク質が過剰に生成されるサイトカインストームによって血栓ができやすくなるという背景もあり、それらの血栓が脳や心臓の血管で詰まり脳梗塞や心筋梗塞など重大な病状を引き起こしてしまうリスクが高いと言われるようになりました。
私の記憶では、割と早い段階でどのような姿で、どのように構成され、どのように増殖するかなどについては、かなり情報があったように思います。
また、新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染であろうと言われており、故にアルコール消毒やマスクの着用が推奨されてきました。
感染症は、体内に病原体が入り込む事によって引き起こされます。病原体とは、細菌、真菌そしてウイルスなどを指し、それぞれの病原体によって治療方法が異なります。また、感染経路も病原体によって異なるため、新型コロナウイルス感染症の発生当初は予防策として様々な事が言われました。
ちなみに、細菌は細胞を持つ生物ですが、ウイルスには細胞が無く、タンパク質や遺伝子(DNA, RNA)で構成されています。ウイルスは他の生物に依存しなければ増殖する事ができず、抗生物質では対処することができません。
体の中で主な病原体と戦う役割を担っているのが、血液の中にある白血球です。白血球には幾つかの種類があり、細菌やウイルスを食べるマクロファージ、病原体に合わせた武器(抗体)を生成して攻撃するリンパ球などがあります。
免疫には2種類あり、病原体が体内に入った時にはまず自然免疫が防御しますが、病原体は増殖のスピードが速いために対応し切れない場合があります。そこで、第2段として獲得免疫が発動します。
獲得免疫は、樹状細胞が病原体の情報を解析、病原体を破壊する物質を出すキラーT細胞を活性化させたり、抗体を作るB細胞の司令塔であるヘルパ-T細胞に情報を伝達します。
最終的には、獲得免疫と自然免疫のダブル攻撃で病原体を撃退するというのが、我々が持つ素晴らしい病原体に対抗する機能となります。
ただ、我々の体にはこういった素晴らしい機能があるものの、スペイン風邪や新型コロナウイルスではパンデミックと呼ばれるまで大流行し、多数の死者が出ています。
これには理由があり、実は我々の免疫力は、過去に対峙した経験が無ければ速やかな反応をする事ができません。特に新型の病原体の場合は、体内で充分な量の抗体を生成する時間が長くなる(獲得免疫が出来上がるのが遅い)ため、その間に重症化してしまうのです。
新型コロナウイルスへの感染リスクを低下させるためには、新型コロナウイルスの主な感染経路である飛沫感染」と「接触感染」への対応が肝心です。
飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみなどと一緒にウイルスが放出され、それを他の人が吸い込むことで広がっていく事を示します。
咳やくしゃみなどによって放出された飛沫は、5マイクロメートルより大きい物は最大2m程度飛び、5マイクロメートルより小さいエアロゾルになると長い間(ある実験によると3時間以上!)空気中に漂います。現時点でエアロゾルからの感染は確定的ではありませんが、その可能性があるとの指摘も根強くあります。
飛沫感染への対応として、我々ができる事はマスクの着用です。不織布マスクの場合、隙間が1マイクロメートル未満であるため、比較的大きな飛沫であればかなり効果的に防ぐ事が可能です。ちなみに、ガーゼタイプになると隙間がやや大きく、サイズの小さな飛沫をスッと通してしまう可能性があるようですが、私の場合は肌荒れが酷いのでガーゼタイプを使用する日が多くなりました。
もう1つは、接触感染の対応です。接触感染には、手洗いやアルコール消毒が推奨されており、現実どこにいってもアルコール消毒するように勧められる世界になりましたが、なぜ必要なのかを理解している人は意外と少ないと感じます。
実は、手洗いやアルコール消毒は、科学的にウイルス対策として有効であるとわかっています。具体的には、石鹸や洗剤に含まれる界面活性剤や70%以上のアルコール消毒剤は、ウイルスの表面を覆うエンベロープを破壊し、ウイルスから感染する機能を奪う事が可能です。
なお、次亜塩素酸水も一部で話題になりましたが、効果自体はあるものの正しい保存状態や濃度を守る必要があるため、手軽さという点では一歩劣ってしまうようです。
過去と比較して、ストレス社会を生きていると言われる現代人の免疫力は下がりやすいと言われています。これは、ストレス下おいて分泌される特定のホルモンによって、ウイルスを外に排出する機能や免疫細胞の働きを弱めてしまう事が原因とされています。
また、免疫力を低下させる原因は、年齢によるものも大きいと言われますが、自分でコントロールできる事で言えば飲酒や喫煙も挙げられます。
つまり、飲酒や喫煙を控え、適度に運動しながらバランスの良い食事を摂り、睡眠時間をきちんと確保するという基本的な事をしっかり実行することで免疫力の落ち幅を小さくする事ができるとも言えます。
治療薬の開発は、3万種類の化合物の中からウイルスに効きそうなものを割り出し、診療試験を繰り返して効き目や副作用についての経験を蓄積していきます。これはどんな病原体に対しても同様で、1つの治療薬の開発には10年以上かかる事も珍しくありません。
現時点では、別の病気を治療するための薬を新型コロナウイルス用として転用する研究が勧められ、日本では元々エボラ出血熱用として開発れさたレムデシビルが承認されるなどしています。
また、体内に強制的に抗体を作り出すワクチンの開発も進んでおり、14日にはアメリカでファイザー製のワクチンの投与が開始されました。通常、ワクチンの開発には数年かかると言われていますが、これだけ早い段階で投与が開始(来年4月までに多くの人々に投与完了予定)されたことで、希望の光が大きくなりました。
但し、直近でもイギリスで新型コロナウイルスの新種が確認されるなど、急速に変異をしているウイルスに対して、どの程度効果を発揮するのかはまだ未知の部分だと言え、まだまだこれまで同様の対抗策の必要性は高いままだと言えます。
集団免疫とは、新型コロナウイルスに一度感染すると抗体ができ、それが長時間持続する事が大前提となりますが、SIRモデルでは社会全体の6~7割り程度の人に抗体ができれば、新型コロナウイルス感染症は収束するという予測となっているようです。
しかし、新型コロナウイルスに関しては、比較的早い段階から集団免疫の獲得は難しいという声も多く、特に6月~7月以降は様々な国の研究機関からそのような報告が出されています。
また、実際に社会全体の6割が新型コロナウイルスに感染すると大変な事になるので、やはり効果的なワクチンの登場を待つほうが得策だと思います。ただ、日本感染症学会では、終生免疫を獲得するワクチンの作成は難しいと報告されているため、インフルエンザ予防接種の様に毎度流行前に接種する面倒なタイプになるかもしれません。
前提として、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、外食産業・小売業・観光業などは外出自粛に伴って大きな需要減に直面しました。これには、インバウンド消費がほぼ0になった事も大きく影響しています。また、出勤調整などによる生産能力の低下、サプライチェーンの寸断による生産の停止など、供給面でも大きな過大が顕在化しました。
働き方の変化により、主に通信・IT分野は著しく成長するでしょう。いわゆるサテライトオフィスを持つ企業が増えるとは思いますが、テレワークの浸透によって出張が不要になる事を考えると、不動産需要や航空会社などの需要は減少すると思います。
但し、日本の企業の大多数が中小企業であるため、ドラスティックな変化を受け入れない、もしくは変化する事が様々な事情により難しい事も事実ですので、この変化の程度予測はとても難しいと思います。
個人消費に関しては、確実にインターネットにシフトすると考えています。すでに消費動向に顕著に現れていますが、オンラインサービスの活用、自宅で楽しめるエンターテイメント関連、食品・日用品などの巣篭もり需要はアフターコロナも引き続き伸びると思います。
特に、消費のインターネットシフトが明確になるため、EC市場の拡大と再編が一気に進行する可能性が高いと思います。また、実店舗主体の小売業については、業態自体が淘汰されていくでしょう。
また、非接触を進めるという名目で、無人化や省人化の判断が以前よりしやすくなっているため、正規雇用人口は減少していくと思います。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大の最中、サプライチェーンが寸断された事による混乱は記憶に新しい部分であり、今後はBCPの観点からグローバリゼーションを後退させてでも、部品生産の国内回帰が進むと思います。そうなれば、新たな雇用の創造が考えられるため、失業率の改善に一役買うかも知れません。
ウイルスなど病原体との戦いは、過去もそして未来も続いていく事になるでしょうが、医学・医療が飛躍的に発達した現代において、100年前のスペイン風邪の様な出来事が再現されるとは全く想像していませんでした。
子育て中の我が家にとって、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子どもへの感染並びに精神的ダメージを最も懸念しましたが、いまのところ上手くコントロールできている状況です。
しかし、山奥で自給自足の生活をしているわけではないため、どれだけ注意をしていても感染リスクを0にすることは難しく、今後も最大限警戒をする必要があると思っています。
反面、経済活動をしている組織に属する者としては、過剰な対策は経済へのダメージを深刻化するため、国や地方自治体にはその辺を上手くコントロールしていただきたいと思っています。
目に見えないウイルスとの戦い、それもこれまで我々が実体験した事がない規模のパンデミックに対応する事は非常に難しいミッションであるため、社会全体でこの危機を乗り越えていく事が肝要です。
【注意】
当記事は新型コロナウイルス感染症について、医学の素人である私が聞きかじった医学的知識が記載されており、その正確性は全く担保されていない事にご注意ください。
大きな影響を及ぼしたウイルス
思い返せば、2019年12月に中華人民共和国 湖南省武漢市で原因不明の肺炎患者から新型コロナウイルスが初めて「発見」された時は、1年後にこういう状況になっていると予想している人は皆無でした。日本において新型コロナウイルスの危険性を大きく認識させたのは、2020年1月に武漢市に渡航歴の無い(武漢市からの観光客と接触があった)男性、その男性及び武漢市からの観光客と接触があった女性、さらに男性とのみ接触があった女性が感染した事だと思います。
これは、日本において同一空間を共有した人間の間で新型コロナウイルスが感染した最初の事例となり、すでに対岸の火事では無いなと感じた記憶があります。
2020年1月27日に、新型コロナウイルスの発生源とされる中国からの団体客受け入れを停止したものの、北海道においては、2020年1月31日~2月11日まで例年大勢の観光客で賑わうさっぽろ雪まつりが開催されており、メインの大通会場(2月4日~11日まで)には約158万人が訪れました。
その後、北海道では緊急事態宣言を発令するに至り、一時落ち着いていたものの、最近は再び感染者数が大きく伸びている状況となっています。
世界経済に深刻なダメージ
新型コロナウイルスの感染拡大は、各国の経済に大きなダメージを与え、結果的に世界全体の経済は大きな落ち込みを見せることになりました。個人的な予測ですが、世界のGDPが2019年水準に回復するのは、早くても2022年以降になると思います。新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた今年春(4-6月期)の売上動向を見ると、観光・レジャ-産業(対前年同期 日本-74%)、航空会社(同 日本-77%)、外食・総合小売(同 日本-29%)、物流(同 日本-27%)など特定の業種の減収幅がかなり大きくなっています。
この傾向は、すでに新型コロナウイルスからの脱却を始めていた(と主張する)中国以外の国々では、割合は多少異なれど同じ傾向が見られました。
現時点で、日本においても東京や北海道では一部業態に営業自粛要請が出させるなど、感染抑止策によって消費活動が停滞しています。特に直近の感染拡大によって、飲食業、小売業だけではなく幅広い業種で倒産が増加しています。
まるでスペイン風邪の再来のよう
2020年2月頃、新型コロナウイルスは世界中で多大な影響を及ぼす「パンデミック(世界的大流行)」の状態になりました。4月には各国でロックダウンが実施されたことにより感染拡大ペースはやや減速したものの、5月以降になるとアジアや中南米を中心に再び感染拡大が進行しました。おそらく人類史上、これまで幾度となくパンデミックは繰り返されてきました。ただ、パンデミックの科学的証明は1900年頃からとされており、最も有名なのは1918年~19年にかけて発生し、世界人口の25~30%(WHO推計)の人が亡くなったとされるスペイン風邪でしょう。
スペイン風邪の病原体は、H1N1亜型のインフルエンザウイルスでしたが、当時は抗生物質が発見されておらず、インフルエンザウイルスの分離も1933年の出来事でしたので、まともな医学的アプローチはありませんでした。
ちなみに、日本においては38万人(内務省統計)が無くなり、人口のほぼ半数が感染したとされています。
新型コロナウイルスを知る
新型コロナウイルスは、「新型」と言われるだけあって当初は本当に何もわかっていませんでした。それでも未知のウイルスに恐怖を感じてばかりいるより、可能な限りの対応策を実行するために、敵をよく知る必要があると思います。新型コロナウイルスに感染すると、発熱・咳・喉の痛み・倦怠感といった風邪の諸症状があり、重症化すると肺炎などの呼吸器症状を引き起こす事は、繰り返し報道されていました。
さらに、現在では血管の内側を傷つける性質がある事がわかってきているようです。血管が傷つられると血栓ができますが、元々炎症がおきた細胞から出されるサイトカインというタンパク質が過剰に生成されるサイトカインストームによって血栓ができやすくなるという背景もあり、それらの血栓が脳や心臓の血管で詰まり脳梗塞や心筋梗塞など重大な病状を引き起こしてしまうリスクが高いと言われるようになりました。
私の記憶では、割と早い段階でどのような姿で、どのように構成され、どのように増殖するかなどについては、かなり情報があったように思います。
また、新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染であろうと言われており、故にアルコール消毒やマスクの着用が推奨されてきました。
そもそもウイルスとは何か
私はこれまで医学をきちんと学んだことが無いので、基本的な事もよくわかりませんでした。私も含めてですが、今回の新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、テレビなどを通じて様々な解説があったために、ウイルスに関しての知識を得た方も多かったのでは無いかと思います。感染症は、体内に病原体が入り込む事によって引き起こされます。病原体とは、細菌、真菌そしてウイルスなどを指し、それぞれの病原体によって治療方法が異なります。また、感染経路も病原体によって異なるため、新型コロナウイルス感染症の発生当初は予防策として様々な事が言われました。
ちなみに、細菌は細胞を持つ生物ですが、ウイルスには細胞が無く、タンパク質や遺伝子(DNA, RNA)で構成されています。ウイルスは他の生物に依存しなければ増殖する事ができず、抗生物質では対処することができません。
ウイルスと戦う仕組み
感染症を引き起こす病原体は、我々一人一人の周囲に普段から普通に存在しています。隙きあらばいつでも病気を発生させる病原体だらけの中を行きている我々ですが、そうそう大きな病気にかからないのは自分の体に免疫という病原体と戦う機能があるためです。体の中で主な病原体と戦う役割を担っているのが、血液の中にある白血球です。白血球には幾つかの種類があり、細菌やウイルスを食べるマクロファージ、病原体に合わせた武器(抗体)を生成して攻撃するリンパ球などがあります。
免疫には2種類あり、病原体が体内に入った時にはまず自然免疫が防御しますが、病原体は増殖のスピードが速いために対応し切れない場合があります。そこで、第2段として獲得免疫が発動します。
獲得免疫は、樹状細胞が病原体の情報を解析、病原体を破壊する物質を出すキラーT細胞を活性化させたり、抗体を作るB細胞の司令塔であるヘルパ-T細胞に情報を伝達します。
最終的には、獲得免疫と自然免疫のダブル攻撃で病原体を撃退するというのが、我々が持つ素晴らしい病原体に対抗する機能となります。
ただ、我々の体にはこういった素晴らしい機能があるものの、スペイン風邪や新型コロナウイルスではパンデミックと呼ばれるまで大流行し、多数の死者が出ています。
これには理由があり、実は我々の免疫力は、過去に対峙した経験が無ければ速やかな反応をする事ができません。特に新型の病原体の場合は、体内で充分な量の抗体を生成する時間が長くなる(獲得免疫が出来上がるのが遅い)ため、その間に重症化してしまうのです。
新型コロナウイルスへの対抗策①
新型コロナウイルスについて一定程度の情報を得ることができた我々ですが、残念ながら現時点において新型コロナウイルスに対抗する決定打を持っていません。しかし、感染リスクを減少させる策を講じる事はできます。新型コロナウイルスへの感染リスクを低下させるためには、新型コロナウイルスの主な感染経路である飛沫感染」と「接触感染」への対応が肝心です。
飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみなどと一緒にウイルスが放出され、それを他の人が吸い込むことで広がっていく事を示します。
咳やくしゃみなどによって放出された飛沫は、5マイクロメートルより大きい物は最大2m程度飛び、5マイクロメートルより小さいエアロゾルになると長い間(ある実験によると3時間以上!)空気中に漂います。現時点でエアロゾルからの感染は確定的ではありませんが、その可能性があるとの指摘も根強くあります。
飛沫感染への対応として、我々ができる事はマスクの着用です。不織布マスクの場合、隙間が1マイクロメートル未満であるため、比較的大きな飛沫であればかなり効果的に防ぐ事が可能です。ちなみに、ガーゼタイプになると隙間がやや大きく、サイズの小さな飛沫をスッと通してしまう可能性があるようですが、私の場合は肌荒れが酷いのでガーゼタイプを使用する日が多くなりました。
もう1つは、接触感染の対応です。接触感染には、手洗いやアルコール消毒が推奨されており、現実どこにいってもアルコール消毒するように勧められる世界になりましたが、なぜ必要なのかを理解している人は意外と少ないと感じます。
実は、手洗いやアルコール消毒は、科学的にウイルス対策として有効であるとわかっています。具体的には、石鹸や洗剤に含まれる界面活性剤や70%以上のアルコール消毒剤は、ウイルスの表面を覆うエンベロープを破壊し、ウイルスから感染する機能を奪う事が可能です。
なお、次亜塩素酸水も一部で話題になりましたが、効果自体はあるものの正しい保存状態や濃度を守る必要があるため、手軽さという点では一歩劣ってしまうようです。
新型コロナウイルスへの対抗策②
マスクの着用やアルコール消毒以外の我々自身ができる対策としては、基礎的な免疫力を向上させる事です。要は、ウイルスと戦う仕組みの部分で記載した「自然免疫」を高めようという狙いです。過去と比較して、ストレス社会を生きていると言われる現代人の免疫力は下がりやすいと言われています。これは、ストレス下おいて分泌される特定のホルモンによって、ウイルスを外に排出する機能や免疫細胞の働きを弱めてしまう事が原因とされています。
また、免疫力を低下させる原因は、年齢によるものも大きいと言われますが、自分でコントロールできる事で言えば飲酒や喫煙も挙げられます。
つまり、飲酒や喫煙を控え、適度に運動しながらバランスの良い食事を摂り、睡眠時間をきちんと確保するという基本的な事をしっかり実行することで免疫力の落ち幅を小さくする事ができるとも言えます。
新型コロナウイルスへの対抗策③
ここ1ヶ月くらいの間、新型コロナウイルスに対抗する治療薬やワクチンについての話題が多くなってきました。これは、開発がある程度進んでいる証左だと捉えており、そう遠くない将来に人類は新型コロナウイルスを克服すると確信しています。治療薬の開発は、3万種類の化合物の中からウイルスに効きそうなものを割り出し、診療試験を繰り返して効き目や副作用についての経験を蓄積していきます。これはどんな病原体に対しても同様で、1つの治療薬の開発には10年以上かかる事も珍しくありません。
現時点では、別の病気を治療するための薬を新型コロナウイルス用として転用する研究が勧められ、日本では元々エボラ出血熱用として開発れさたレムデシビルが承認されるなどしています。
また、体内に強制的に抗体を作り出すワクチンの開発も進んでおり、14日にはアメリカでファイザー製のワクチンの投与が開始されました。通常、ワクチンの開発には数年かかると言われていますが、これだけ早い段階で投与が開始(来年4月までに多くの人々に投与完了予定)されたことで、希望の光が大きくなりました。
但し、直近でもイギリスで新型コロナウイルスの新種が確認されるなど、急速に変異をしているウイルスに対して、どの程度効果を発揮するのかはまだ未知の部分だと言え、まだまだこれまで同様の対抗策の必要性は高いままだと言えます。
新型コロナウイルスの克服とは
一般的に新型コロナウイルス感染症を克服したという状況は、治療薬が開発され効果が実証された時、または社会全体が感染症に対抗力を持つ集団免疫を獲得した時だと思います。集団免疫とは、新型コロナウイルスに一度感染すると抗体ができ、それが長時間持続する事が大前提となりますが、SIRモデルでは社会全体の6~7割り程度の人に抗体ができれば、新型コロナウイルス感染症は収束するという予測となっているようです。
しかし、新型コロナウイルスに関しては、比較的早い段階から集団免疫の獲得は難しいという声も多く、特に6月~7月以降は様々な国の研究機関からそのような報告が出されています。
また、実際に社会全体の6割が新型コロナウイルスに感染すると大変な事になるので、やはり効果的なワクチンの登場を待つほうが得策だと思います。ただ、日本感染症学会では、終生免疫を獲得するワクチンの作成は難しいと報告されているため、インフルエンザ予防接種の様に毎度流行前に接種する面倒なタイプになるかもしれません。
アフターコロナの生活様式
新型コロナウイルスの感染拡大により、私自身も今年通常ではまず考えられない在宅勤務を経験しましたが、今回の経験を通じて、新型コロナウイルスがある程度収束した後も世界的には様々な変化が発生し定着すると考えています。前提として、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、外食産業・小売業・観光業などは外出自粛に伴って大きな需要減に直面しました。これには、インバウンド消費がほぼ0になった事も大きく影響しています。また、出勤調整などによる生産能力の低下、サプライチェーンの寸断による生産の停止など、供給面でも大きな過大が顕在化しました。
ライフスタイルは変化する可能性が高い
日本社会における大きな変化は、テレワークやクラウドによる働き方、実店舗からインターネットへの消費シフトの加速、正規雇用人口並びに所得の減少による低価格志向化の加速などが考えられます。働き方の変化により、主に通信・IT分野は著しく成長するでしょう。いわゆるサテライトオフィスを持つ企業が増えるとは思いますが、テレワークの浸透によって出張が不要になる事を考えると、不動産需要や航空会社などの需要は減少すると思います。
但し、日本の企業の大多数が中小企業であるため、ドラスティックな変化を受け入れない、もしくは変化する事が様々な事情により難しい事も事実ですので、この変化の程度予測はとても難しいと思います。
個人消費に関しては、確実にインターネットにシフトすると考えています。すでに消費動向に顕著に現れていますが、オンラインサービスの活用、自宅で楽しめるエンターテイメント関連、食品・日用品などの巣篭もり需要はアフターコロナも引き続き伸びると思います。
企業活動は難しい局面になりそう
企業活動においては、景気悪化を背景として財務体力に劣る企業の淘汰・再編の増加、設備投資の低迷、サプライチェーンの見直し、雇用調整、デジタル(クラウド)化の加速などが挙げられます。特に、消費のインターネットシフトが明確になるため、EC市場の拡大と再編が一気に進行する可能性が高いと思います。また、実店舗主体の小売業については、業態自体が淘汰されていくでしょう。
また、非接触を進めるという名目で、無人化や省人化の判断が以前よりしやすくなっているため、正規雇用人口は減少していくと思います。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大の最中、サプライチェーンが寸断された事による混乱は記憶に新しい部分であり、今後はBCPの観点からグローバリゼーションを後退させてでも、部品生産の国内回帰が進むと思います。そうなれば、新たな雇用の創造が考えられるため、失業率の改善に一役買うかも知れません。
おわりに
新型コロナウイルスは、マクロ的にもミクロ的にも本当に大きな大きな影響を我々に及ぼしました。そして、その影響はいまこの時点でも続いており、不自由な生活を強いられ続けています。ウイルスなど病原体との戦いは、過去もそして未来も続いていく事になるでしょうが、医学・医療が飛躍的に発達した現代において、100年前のスペイン風邪の様な出来事が再現されるとは全く想像していませんでした。
子育て中の我が家にとって、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子どもへの感染並びに精神的ダメージを最も懸念しましたが、いまのところ上手くコントロールできている状況です。
しかし、山奥で自給自足の生活をしているわけではないため、どれだけ注意をしていても感染リスクを0にすることは難しく、今後も最大限警戒をする必要があると思っています。
反面、経済活動をしている組織に属する者としては、過剰な対策は経済へのダメージを深刻化するため、国や地方自治体にはその辺を上手くコントロールしていただきたいと思っています。
目に見えないウイルスとの戦い、それもこれまで我々が実体験した事がない規模のパンデミックに対応する事は非常に難しいミッションであるため、社会全体でこの危機を乗り越えていく事が肝要です。