最近ホンダの10速ATが話題になっています。

急に変速機の話題入れ込んだのは、単に私が興味を持ったからです。現在は全く違う職種ですが、元々機械工学を勉強していたので、こういった変な事に反応してしまいます。

自動車の変速機について

自動車が搭載する変速機は「マニュアル」と「オートマ」の2種類に大別されます。私と同年代くらいだと、運転免許を取得する時にどちらを選択するか迷った方もいるかと思います。

統計によると1980年代中頃までは新車販売台数においてマニュアルとオートマの比率はほぼイーブンでしたが、現在では約99%となりマニュアル車は絶滅危惧種に指定されるほど減少しています。ちなみに、普通免許とAT免許の取得者の比率は、MTが43%程度となっています。

  年 代   MT比率  AT比率  乗用車総販売台数 
1985年51.2% 
48.8%2,892,894
1990年27.5%72.5%4,085,005
1995年19.2%80.8%3,181,286
2000年8.8%91.2%2,710,840
2005年3.4%96.6%3,096,683
2010年1.7%98.3%2,714,319

個人的にはマニュアル車は操る楽しさもあり好きですが、信号が非常に多い日本(特に都心部)ではオートマ車が良いと思います。オートマ車の比率が約30%と言われるヨーロッパでは、確かにマニュアル車でもあまり苦ではありませんでした。

日本ではオートマが圧倒的に普及している現状ですが、実はオートマと一言で言っても幾つかの種類やトピックがあります。

オートマの種類は、
  • 一般的なオートマ(トルコンステップ、以下ATと記載)
  • 無段変速機(CVT)
  • セミオートマティック(DCTなど)
と大きく3種類存在します。

ATの発明は古いのですが、普及はWW2以降にアメリカが先行しました。日本では先程の表の通り1980年台中頃から爆発的に広がってきました。

私が実際に肌で感じた1990年以降、日本国内では「AT ▶ CVT ▶ AT」という流行の変遷を辿っています。私が2002年に一番最初に購入したCR-V(LA-RD5)は、4速ATと当時としては標準的だったと記憶しています。

その後、エンジンの最も効率が良いポイントを使い続ける事ができるCVTが普及しました。CVTは変速機自体の単体効率が悪いのですが、日本では長距離を一定速度で走行する場面が少ない為(カタログ数値上では)燃費改善効果がありました。

2010年代になると欧州車を筆頭にATの多段化(7~8速)が急速に広がりを見せてきました。但し、日本では一部の高級車を除けば、まだ5~6速ATが主流となっています。
また、これも欧州車が中心ですがDCTなどのセミオートマティックを採用する車も増えてきました。しかし、変速ショックなどが強いなどの理由もあり日本ではあまり普及していません。

日本の現状としては、やはり多段化されたATが主役と言えるかと思います。

なぜATは多段化しているのか

私が幼少の頃、自転車では多段化ブームが起こっていました。6段変速から18段や24段と買い換える度に多段化されていった記憶があります。それからかなりの年月が経ち、今度はATの多段化をリアルタイムで見ています。

ATが多段化される理由は、巡航時(エンジンが低回転域にある時)の燃費性能の向上が主な理由でしょう。ATの多段化は低回転でも充分なエネルギーを得ることが可能な大排気量車で発展してきましたが、最近流行している所謂ダウンサイジングターボにより小排気量車でも多段化の波がやってきました。
【少し詳しい説明】
例えば100km/h巡航時にエンジンの回転数が2,500rpmだとすれば、2,500rpmを生み出すエネルギーと100km/hで巡航するエネルギーの均衡が取れている状態ですが、それが1,500rpmになれば1,000rpmの分だけ燃費が良くなります。
そもそもエンジンは空気とガソリンをいかに上手く混合し、その混合されたものをどれだけ燃やすかがキーとなります。単純に最初から多く燃やしたり回転を上げて次々燃やせば生み出されるエネルギーも増大しますが、それでは燃費が悪化してします。
ですから、2,500rpmで生み出していたエネルギーを1,500rpmで生み出す為に、小排気量車ではより多くエンジンに空気を送り込む事で大きなエネルギーを得ることができるターボを利用します。

CVTが流行する以前(2000年代前半まで)のATは、よくギアがワイドだとかクロスだという表現をしました。しかし、現在の多段化ATではその概念は当て嵌まりません。
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概念図(実際とは異なります)

以前のATはある一定の高さを登るために何段必要かという考え方でしたが、現在のATは高さ自体を高くしていく方向にあります。

ここで言う「高さ」は「レシオカバレッジ」(1速の変速比に対してトップギアのギア比が何倍であるか)と言い換えることができます。
ちなみに、CVTが廃れつつある理由の1つには構造的にレシオカバレッジを大きくすることが難しいことが挙げられます。
【レシオカバレッジとは】
例えば、CR-V(RM4)のレシオカバレッジは、「1速変速比 2.785 / 5速変速比 0.566 = 4.920」ですが、最新のZF社製9速ATのレシオカバレッジは、「1速変速比 4.713 / 一番上のギア(9速)変速比 0.480 = 9.819」と倍の数値になっています。
1速変速比は、エンジン性能と車両重量からほぼ自動的に決定されます。以前のATの考え方の場合、レシオカバレッジだけを大きくすると極端に加速が遅い車になります。
対して現代のATでは、ATを多段化しレシオカバレッジを可能な限り大きくする(図で言えば水色線の部分)ことで、発進加速を犠牲にせず巡航時にエンジンの回転数を低く抑える事ができ、燃費性能を向上させる事が可能になるのです。
現代のATはまだ高級車を中心とした一部の車種に搭載されている程度ではあるものの、カタログ燃費競争が続けばラインナップは拡大していく事になるでしょう。
しかし、個人的に巡航時の燃費性能を向上させる事が、果たして日本国内において有利となるかは疑問として残ります。北海道の田舎ならまだしも、都会に住んでて高速道路の利用頻度が低いならばレシオカバレッジが低くても問題はないと思います。

ちなみに、MTも現在では6速が主流ですが、ポルシェの7速MTを除いて多段化される気配はありません。これは、高性能スポーツカーのAT化が進んでいる事と、あまりにも多いギア数をマニュアルで操作すると使いにくい事が理由です。

ホンダの新開発10速ATについて

ホンダの従来型ATは平行軸方式という特殊な物でしたが、新開発の10速ATは一般的な遊星歯車方式を採用しています。

多段化にするデメリットとして遊星歯車が増えることによるATの大型化という問題がありましたが、新開発の10速ATは大排気量車の主流である6速ATとほぼ同等のサイズを実現したそうです。つまり、新開発の10速ATはCVTとの相性が悪い大排気量車をターゲットに開発されたという事でしょう。

日本国内では該当する車種がないのですが、ダウンサイジングターボを搭載するステップワゴンに搭載できるとかなり注目されると思います。
とりあえず北米でしか搭載しないだろうホンダ10速ATですが、将来的には我々一般庶民が手の届く範囲の車にも多段化されたATが搭載されていくでしょう。


(Last Editing Date : 2018 / 08 / 21)